九州学院の西門(電車通り側)をくぐり校内へと続く通路の両側(当初は職員住宅と寄宿舎の間)に、熊本では非常に珍しい大きな並木があった。多くの卒業生の記憶の中に残っているものと思われる。
この木の花がチュ―リップに似ていることから、別名チュ―リップの木とも呼ばれている。春から初夏には緑の木陰とチュ―リップに似た花、夏は旺盛に茂り秋には綺麗な紅葉で彩られた並木であった。現在は全て伐採されてしまって、その美しい緑陰や秋の紅葉が見られなくなったのは非常に残念である。
北アメリカの中部が原産で明治初期に日本に渡来したものであり、学院の並木は創立から間もなくの頃に植えられたと思われ、樹齢100年あまりであった。残念ながら年を経て老樹となり倒木の危険が出てきたため、1966(平成8)年に並木路が新しいプロムナードに改修されるのに伴いその多くが伐採された。残っていたグラウンド側の数本と西門側のユリの木も2010(平成22)年には姿を消した。
最後まで残っていた西門脇の老木は、伐採の時に浅川牧夫歴史資料・情報センター長の提案で根元を輪切りにして保存することになり、現在は歴史資料・情報センターの入口に展示されている。樹齢100年近い切り株(根回り約4m)の形は、頭を上にして手足を広げた長寿のシンボルといわれる亀の形に似ている。この切り株を支えている木製の台座は、1931(昭和6)年に創立20周年記念として図書館や総タイル張りのプール、階段教室のある特別教室棟などともに竣工し、2011(平成23)年に解体された旧体育館の天井の梁材を用いて作られている。いずれも九州学院の長い歴史の貴重な証人である。