厚賀氏(S14回)制作「おばけの金太」欧州へ
[2023-11-07]
肥後の伝統工芸「おばけの金太亅の制作者の厚賀新八郎氏(S14回・1962年卒)は、この度フィンランドのデザイナーと共同で新たな作品を発表しました。熊本の代表的な民芸品へのこれからの反響が注目されるところです。
<熊本日日新聞 | 2023年11月6日 19:16>(電子版)
熊本で10代続く人形師の厚賀新八郎さん(80)=熊本市西区=が、フィンランドのデザイナーとコラボした金太を制作した。厚賀さんによると、外国人とのコラボは江戸後期から170年ほど続く金太の歴史でも初めて。「Mr.Tongue(舌)」との商品名で欧米で販売する予定という。
コラボしたのは、フィンランド人のヨハン・オリンさんと韓国人のアーム・ソンさん夫婦。首都ヘルシンキを拠点に、現代デザインと伝統工芸を融合させたマトリョーシカなどの作品を手がけている。
厚賀さんとオリンさん夫婦の双方と交流のある「地域文化商社うなぎの寝床」(福岡県八女市)によると、2人は7年ほど前に熊本を訪問した際、おばけの金太に一目ぼれ。厚賀さんの工房を訪ね、「おばけの金太にすてきなカラダと洋服をプレゼントしたい」とコラボを申し出た。あまり言葉は通じなかったが、厚賀さんは「金太が世界に出ていくのであれば喜ばしい」と承諾。夫婦のデザインに基づいた「Mr.Tongue」を2018年までに40体、今年5月から追加の50体を制作して順次発送している。
郷土玩具の金太は赤い顔に黒いえぼしをかぶり、ひもを引くと目玉がくるりと回って目を見開き、舌が飛び出すからくり人形。「Mr.Tongue」は金太と同じ「朱赤」と、白にピンクのほおをした「木の色」の2種類がある。シラカバ製の胴体にボーダー柄、えぼしにかご目柄を、厚賀さんが黒い塗料で筆書きしている。白い方の人形は〝あか抜けた〟印象だ。
「向こうの人たちの感覚からすると舌を出すなんて行儀悪かし、まして赤い顔の人形なんて世界中見回しても多分なかでしょう。それが現代ヨーロッパのデザインとの融合によって新しい命を吹き込まれた。おばけの金太だけに、化けましたねえ」。厚賀さんは温和な口調でにこやかに語る。(川﨑浩平)
[おばけの金太]
加藤清正に仕えていた足軽の金太がモデルで熊本城築城に携わった人夫をおどけたしぐさで笑わせ、顔が赤いのは酒を飲んでいるためというのが定説。厚賀新八郎さんの先祖に当たる5代目彦七が江戸後期の嘉永年間(1848~54年)に考案したとされる。厚賀さんによると、金太の顔が赤いのは疫病(天然痘)などから男の子を守る魔よけの意味もあったと考えられるという。