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毎日新聞 「未来へのメッセージ」 末続慎吾氏(S51)

[2016-03-29]

九州学院105年・未来へのメッセージ 

自由な雰囲気で成長 

陸上選手・末続慎吾さん /熊本

                        毎日新聞2016年3月27日 地方版

末続慎吾さん(35)

 <陸上男子200メートルの日本記録保持者で北京五輪男子400メートルレー銅メダリストは、中学時代から九州で注目の有望選手だった>

 中3の進路決定の時期、九州学院陸上部の禿雄進監督が声をかけてくれました。「君と一緒に陸上がやりたい」と。中学生の僕と同じ目線で語ってくれたのが印象的でした。速くなる方法を一緒に考えようという姿勢に引かれて入学しました。

 <高校生活は部活動が中心だった>

 授業中に眠気が襲ってうとうとすることもありましたが、先生たちは頭ごなしに注意せず「練習で疲れているんだよな」という優しさを感じました。逆に「しっかりしないと」と気が引き締まりました。陸上部は選手たちが自ら練習を組み立ててやることが多く、創造力が養われました。

 <疑問があれば何でも聞ける自由な雰囲気の中で成長できた>

 2年生の冬、スタートダッシュを繰り返す練習中、気温が低くて筋肉の故障を懸念する声が部員から上がり、僕が代表して禿先生に「なぜこの練習が必要なのですか」と伝えました。それは文句ではなく単に理由を知りたいという向上心です。禿先生は練習の目的を丁寧に答えてくれて僕たちも納得して練習に励みました。指導者と生徒が互いに心を開いて信頼し合っていました。何となく練習するという姿勢が一番良くないと思います。

 <高校時代は国体の100メートルで2回優勝するなど活躍したが、高3の夏のインターハイ前に大けがをした>

 練習後に体育館でバスケットボールをして遊んでいたら、窓ガラスに足を突っ込んで十数針縫うけがをしてしまいました。インターハイには出場しましたが100メートルで8位、200メートルでは予選落ちでした。自分が何をすべきかを客観的に考える大切さを学びました。

 <進学した東海大で400メートル日本記録保持者の高野進コーチの指導を受けて躍進。シドニー、アテネ、北京五輪に出場するなど陸上界のエースとして華々しい記録を残した>

 気持ちはいつも高校時代と同じでした。陸上を愛し、どうやったら速く走れるかばかりを考えてやってきました。昨年、12年間所属したミズノを退社し、現在は熊本陸上競技協会に登録して個人で競技しています。自分のスタイルで練習がしたいし、生まれ育った熊本の地で成長したい。熊本を拠点にし、競技会がある東京にも通いながらトレーニングを重ねています。

 <35歳だが競技者としてのピークが過ぎたとは思っていない>

 20代とは違う走り方ができ、今も進化の途中にいると感じています。自分が大好きな陸上競技を通じ、県民の皆さんに喜んでもらえたらうれしいですね。

 <自らを振り返り若い世代には『失敗を恐れるな』と伝えたい>

 以前は失敗やけがをしたらどうしようかと不安が大きかったですが、今は走った後にどんな人生が待っているんだろうと考えているので楽しい。若い人にはやりたいと思ったことにはまず挑戦してほしい。失敗した自分を格好悪いと思って挑戦を恐れず、挫折や失敗を経て自分が真に向かう道や夢が見えてくることを知ってほしい。不可能だと思ったこともやってみたら案外可能なことも多いものですよ。【柿崎誠】=次回は4月10日掲載。卒業生は幻のモスクワ五輪ボクシング日本代表の木庭浩一さんです。


 ■人物略歴

すえつぐ・しんご

 1998年卒業。2003年に樹立した200メートル20秒03の日本記録は今も破られていない。同年の世界選手権パリ大会200メートルでは、短距離種目としては五輪、世界選手権を通じて日本人初の表彰台となる銅メダルを獲得。同年に県民栄誉賞を授与された。08年の北京五輪400メートルリレーでは第2走者を務め銅メダル獲得に貢献した。08年10月以降は休養宣言をしていたが、11年10月にレースに復帰。15年3月に「ミズノ」を退社し、個人で競技を続けている。

 

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    写真:九州学院グラウンドのレーン横に設置されている末續選手の足形