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おしらせ

桑崎くん インドでのボランティア活動手記を寄稿

[2017/10/04]

 今夏、本校3年生の桑崎敬介くんはインドのコルカタにある「カリガート(通称:死を待つ人々の家)」でのボランティア活動に参加しました。カリガートとは、故マザー・テレサによって始められた諸施設の一つで、さまざまな病により終末期にある人々が運ばれてくるところです。医療施設とは異なり(有資格者による投薬などはあります)この施設での活動は、マザー・テレサの人々への愛がその基盤におかれています。本日は桑崎くんの寄稿文を紹介させていただきます。

 

 「高校3年生の夏になぜインドへ?」と皆さんはきっと思われることでしょう。私自身もそうであるように、高校3年生の夏は受験生にとってたいへん重要な時期であり、その大切なときに海外でのボランティア活動に加わるというのは、ある視点から見れば勉強時間を失ってしまうととらえられることでしょう。しかし、私は知人から勧められたこの機会をこれからの人生を歩んでいくうえでの大きな転機にしたいとの思いを強くし、今回のインド訪問にいたりました。

 カリガートには路上などから日々何人も運ばれてきます。50〜60ある簡易ベッドはほぼいっぱいの状態。運ばれてきて数日で亡くなることも珍しくないことからカリガートは「死を待つ人々の家」とよばれています。横になった方々のなかには自力歩行どころか起き上がることさえままならない状態の方もいました。

 マザー・テレサが最初につくった施設がこのカリガートだと聞きました。投薬や点滴は見ることがありましたが、病院のような高度な医療行為は行われていませんでした。マザー・テレサはなぜこのカリガートを最初につくったのでしょうか。それは、行き交う人々の誰からも見向きされずにただ孤独のなかで死に行く路上に横たわる人々に、せめて最後くらい「愛」を送りたい、受け取ってほしいとの願いからでした。

 そのような経緯で創設されたカリガートでのボランティア活動を始めるにあたり、私は情熱とともに緊張や不安もありました。実際、初めの数日は生活されている方々との意思疎通に戸惑うことや、さまざまな文化をもち性格も異なる他のボランティアとの交流に躊躇することもありました。

 カリガートでの私の活動は次のようなものでした。朝、スタッフとボランティアが一堂に会してミサが行われ、賛美と祈りのうちに活動の詳細が語られます。また、当日が最終日にあたるボランティアの方に対する感謝のひとときももたれました。その後、大量の洗濯物を丁寧に手洗いし、食事や入浴の介助、排泄処理、着替えのサポートやシーツ交換など多岐にわたる活動に携わらせていただきました。

 少しずつ慣れていくなかで見えてきたことや感じたことがありました。それは、生活者のなかには会話どころか動けない方も少なくないのですが、そのような方も含めてどこか落ち着きのある穏やかな表情をされた方が多いことでした。なかには私たちボランティアに対してときには明朗快活にときには必死に語りかける方も多くいらっしゃいました。

 マザー・テレサの残した有名な言葉「愛の反対は無関心です。私たちはこの世で大きなことはできません。ただ、小さなことを大きな愛でもって行うのです」の重みを、私は自分の体験を通して理解することができました。と同時に、それまで当然のように思っていた私の考え方がいかに甘くて高慢なものであったかを思い知らされ、そのような自分を見つめ直すよいきっかけを今回の活動で与えていただきました。

 2週間という限られた時間ではありましたが、毎日がとても充実して有意義なものでありました。また、私はカリガートで人が亡くなる瞬間に立ち会うことがあり、そのときのことは今でも強く心の中に残っています。私が関わらせていただいた生活者の一人が死を迎えるとき、スタッフ(シスター)と他の生活者が取り囲むように集まり、祈りと愛をもってその方を見送る場を共にさせていただきました。そのとき、私自身が経験したことも相まってさまざまな感情が交錯したことをよく覚えています。

 死は確実にすべての人間に訪れます。それがいつどのような状況で迎えるのかはわかりません。だからこそ私は今生かされているこの瞬間を大切にしていきたいという思いが、今回の体験を通してさらに強まりました。人はその人に寄り添ってくれる、愛してくれる人がいて初めて安心できると私は学ばされました。

 これから私はさまざまな文化や価値観をもつ多くの人々とコミュニケーションをとりながら、本当にその人の役に立てることは何かを考えて行動できる、マザー・テレサの信念を実践できる人間になりたいと思います。そのためにこれからなおいっそう勉学に交流に励んでいきたいです。

 

《下:同時期に活動したボランティアなかまと》

2017100301.png《下:マザーハウス(マザー・テレサの家)にあるマザー・テレサの棺》

2017100302.png《下:お世話になったシスターと》

2017100303.png※カリガートでの撮影は不許可につき写真はありません。